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始まりはいつも東から
僕の名前は東条 歩。二十三歳。
昔から正義感が人一倍強く、曲がった事が嫌いな性格をしている。
その理由は僕が生まれた家にあった。
警察関係者を大勢輩出した家系にあり、父は叩き上げで警視長にまで登り詰めた偉大な人だ。
そんな父の英才教育を受けて幼少期から正しさとは何かを叩き込まれ、人に疎まれようとも規律を重んじて生きてきた。
もちろん将来の夢は警察官で、父を超えようと目標を掲げてやってきたつもりだった。
しかし、不幸な事に僕には全く勉学の才能がなかったのだ。
警察組織のトップ層に立つには学歴も大事で、受験早々に夢は断たれてしまった。
それでも腐ることなく警察学校へと入り、念願叶って交番勤務の仕事に就くことができた。
父は素直に「歩おめでとう。お前は自慢の息子だ」と言ってくれていたが、親戚連中の視線は冷ややかなものだった。気にしないつもりでいたが、正直心の中で焦りも感じていた。
ノンキャリア組として登り詰めるには何か大きな手柄をあげなければならない。
けれども、平和な地区の単なる駐在が大きな事件に関わる事なんて出来るはずなかった。
悩み抜いた末に僕は勤務外で警察無線を傍受し、偶然を装って一人で事件を解決しようと考えた。
来る日も来る日も無線を聴き続けたある日、センセーショナルな通信が耳に飛び込んできた。
『県警本部から各局、爆破の予告との入電あり。調査と確認願います。住所は――』
その無線を聞いた瞬間、僕は大きな胸の高鳴りを覚えた。
「これだ!これを待っていたんだ!」
大慌てで紙に住所を走り書きした。
幸いにも家からそう遠くはない場所のようだった。
もちろんこの手の爆破予告は悪戯であることがほとんどだ。
しかし、僕の警察官としての勘がこの爆破予告が嘘ではないと警鐘を鳴らしている。
それに父は非番の日に強盗を捕まえ、それがキッカケで出世してきたと話を聞いたことがある。僕にも出来ないはずはないんだと、早速準備を整えた。
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