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(あぁ、何つぅ新婚トーク……
こんなカワイイ奥サンいたら、オレの毎日 華やぐんだろなぁ……
つっても、稼ぎもねぇんじゃ結婚なんて夢のまた夢だ)
いつまで こんな金にならねぇ夢で穀潰す気でいるんだか、オレは。
好い加減 実家に帰って、農家手伝った方が親孝行ってもんかね?
つっても、長男夫婦がいるからオレの居場所は無いんだけど。
途方に暮れているオレに、ユーヤ君はボールに卵を落しながら問うて来る。
「で、昨日は どうでしたか? 浅野先輩とは」
「ぁ、ああ。お陰サマでぇ」
「――アハハ、上手くいったみたいで良かった。俺、石神サンの役に立てました?」
「まぁ、そりゃ充分すぎる程に」
「良かったぁ。
石神サンにはお世話になりっぱなしですから、ちゃんとお礼したいんだけど、俺、こうゆう事くらいしか甲斐性が無くって」
「つか、オレ、何か お世話したっけかな?」
ご恩と奉公。ユーヤ君は それくらい律儀な考えの持ち主なのか、
つっても、オレが何をしたかと言えば、初日に引越しの手伝いをしたくらいだ。
あと、回覧板の回し方にゴミの出し方。
大家サンの機嫌の取り方に、ヘッドホン貸したとか その程度で、ここまで構って貰う覚えはねぇよ。
そんなオレの言葉に、ユーヤ君はキョトーーン。
デカイ目をパチクリさせて、少し不満そうに言い返して来る。
「沢山 教えてくれたじゃないですか。俺、本当に助かってるんですよ?
もしかして、ガキ扱いしてます?」
ボンボン扱いしてるだけです。
「そんなことねぇけどさ。
ちと律儀すぎ? 何か心配だよ、オッサンとしては」
「何がです?」
「悪い人に騙されやしねぇかとぉ」
例えばオレみたいな。
まぁ、オレの場合は誤解したってだけだけど、中には血迷ったのもいるだろぉからさ。
そんなオレの不安を他所に、ユーヤ君は笑う。
「ハハハ。俺、石神サンの事 オッサン何て思った事ありませんし、それに騙されないから大丈夫」
「そーゆー人が騙されるんだって」
「じゃぁ、そうゆう時は石神サンが教えてくださいよ。これなら安心でしょ?」
ねぇ。オレ、口説かれてるって思ってもイイですかぁ?
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