5

3/7
前へ
/54ページ
次へ
(あぁ、何つぅ新婚トーク…… こんなカワイイ奥サンいたら、オレの毎日 華やぐんだろなぁ…… つっても、稼ぎもねぇんじゃ結婚なんて夢のまた夢だ)  いつまで こんな金にならねぇ夢で穀潰す気でいるんだか、オレは。 好い加減 実家に帰って、農家手伝った方が親孝行ってもんかね? つっても、長男夫婦がいるからオレの居場所は無いんだけど。  途方に暮れているオレに、ユーヤ君はボールに卵を落しながら問うて来る。 「で、昨日は どうでしたか? 浅野先輩とは」 「ぁ、ああ。お陰サマでぇ」 「――アハハ、上手くいったみたいで良かった。俺、石神サンの役に立てました?」 「まぁ、そりゃ充分すぎる程に」 「良かったぁ。 石神サンにはお世話になりっぱなしですから、ちゃんとお礼したいんだけど、俺、こうゆう事くらいしか甲斐性が無くって」 「つか、オレ、何か お世話したっけかな?」  ご恩と奉公。ユーヤ君は それくらい律儀な考えの持ち主なのか、 つっても、オレが何をしたかと言えば、初日に引越しの手伝いをしたくらいだ。 あと、回覧板の回し方にゴミの出し方。 大家サンの機嫌の取り方に、ヘッドホン貸したとか その程度で、ここまで構って貰う覚えはねぇよ。  そんなオレの言葉に、ユーヤ君はキョトーーン。 デカイ目をパチクリさせて、少し不満そうに言い返して来る。 「沢山 教えてくれたじゃないですか。俺、本当に助かってるんですよ? もしかして、ガキ扱いしてます?」  ボンボン扱いしてるだけです。 「そんなことねぇけどさ。 ちと律儀すぎ? 何か心配だよ、オッサンとしては」 「何がです?」 「悪い人に騙されやしねぇかとぉ」  例えばオレみたいな。 まぁ、オレの場合は誤解したってだけだけど、中には血迷ったのもいるだろぉからさ。 そんなオレの不安を他所に、ユーヤ君は笑う。 「ハハハ。俺、石神サンの事 オッサン何て思った事ありませんし、それに騙されないから大丈夫」 「そーゆー人が騙されるんだって」 「じゃぁ、そうゆう時は石神サンが教えてくださいよ。これなら安心でしょ?」  ねぇ。オレ、口説かれてるって思ってもイイですかぁ?
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加