焦げついた思い

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「じゃ、あとは頼んだよー。翔生」 「はいよ」 亜樹さんは「今日、奥さんが体調悪そうだから翔生がいてくれて助かるわー」とお店を出ていく。 亜樹さんが出ていって、この狭いお店の中にあたしと翔生くんの二人きり。こんな状況今までになくて戸惑ってしまう。 「兄貴がさ、新しい店出すんだよ」 「……え?そうなの?」 「うん、奥さんと一緒に2号店」 「2号店!すごいじゃん」 あたしがたまたま立ち寄って、大好きになったこの狭いお店が新たな展開を迎えることに嬉しさしかない。 「この店は俺がやっていくことになるんだけどさ」 「翔生くんのことマスターって呼ばなきゃじゃん」 「やめろ、柄じゃねぇ。で、何食べる?」 「そうだなぁ……つくね!焦がさないでね」 「焦がさねぇよ」 最後の日に食べたつくね。あれだけはこの2年食べられなかったんだ。 どうしても食べたら泣いてしまいそうで。 「結婚しねぇ?」 お酒はなににしようかなーなんてメニューをみてたら、突然降ってきた言葉に「え?」と思わず声が漏れる。 ゆっくりと顔を上げると真っ赤な顔をした彼がいて「ねぇ、また焦げてるよ」って真っ黒になってるつくねを指さすと「うるせぇ」って熱くなったのかうちわで扇いでる。 「あの時も本当は言いたかったんだよ」 新たにつくねを並べながら、あたしの顔を真っ直ぐにみる。
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