焦げついた思い

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「お待たせ」 ぶっきらぼうに皿に乗ったつくねをあたしの前に置く。 「ありがと」 「お前はこれだろ」 そう言って、七味をあたしの前に置く。 「うん、これ」 あたしはなんでも七味をかけて食べる。なんでもだ。 「ほんと全部にかけるよな。おもしれぇほどに。あ、いらっしゃいませ」 あたしをみて笑いながら話して、そして来客を告げるベルにドアに目をやる。 「久しぶりー!あんた、もうすぐアメリカ行くって言うから来てやったよ」 「お、おう。サンキュ」 あたしにチラッと目を向けてから、やってきた友達であろう2人を「ここ座って」と空いてる席へと案内する。 「アメリカ……知らなかったな」 つくねを口に含みながら、そりゃそうかと納得する。 だって、あたしはただの客で。別に逐一何かを報告するような義務はない。 でも、4年間も週に3回はここで会っていてお互い色んな話をしてきた。 ちょっと仲良いとか思ってたのはあたしだけだったか……と切なくなるけどそういえば連絡先も知らなければここ以外であったこともないや。何も仲良くなかったのかもしれない。 「亜樹さん、おあいそお願いします」 友達と談笑しながら焼き鳥を焼いている翔生くんを横目に亜樹さんに向かって手を上げる。 「お、今日早いね。明日朝早いの?」 「まぁね」 なんだかこれ以上口にすることもできず、つくね2本とビールを一気飲みしてやめた。
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