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こんな泣き顔なんて見られたら、好きだって言ってるようなものじゃないか。
これ以上このままここにいるなんてできなくて、あたしは全速力で走った。
走って家に着いて、ドアを開けてすぐに崩れ落ちた。
「好きだった……」
ずっとずっと好きだった。大好きだった。
初めて入った時も「仕事でなんかあった?めっちゃ疲れた顔してるよ。俺の焼き鳥美味いから食べて元気だしな」って初対面なのに気さくに話してくれた。
出された焼き鳥は本当に美味しくて、疲れた身体を癒してくれて限界だった心を潤してくれて、涙が出た。
「俺の焼き鳥ではねーだろ」って亜樹さんに叩かれてたけど。
でもいくら好きだと思っても何も行動をしてこなかったのはあたしだ。
ここに来れば会えるって思い込んで、その立場に甘えてた。
まさかこんな急に会えなくなるなんて思わないじゃないか。
「好きって言ってれば変わってたのかな」
焼き鳥屋でしか会わなくて、ただの客で連絡先もしらなくて。
そんなあたしが彼に告白なんてするタイミングがあるわけがない。
それに、アメリカに行くというのに連絡先を交換しないあたり翔生くんにとってそれだけの関係ということなんだ。
「教えてよね、いなくなるなら……バカ」
あたしが泣きそうになってたらいつもカウンターの中から伸ばして来ていたその手はもう触れることができないんだ。
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