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「お、彩愛ちゃん!」
「亜樹さん、こんばんはー」
翔生くんがいなくなってもこの店はなくならないしとあたしは2年経った今も変わらず週3で通ってる。
あの日、翔生くんが追いかけてくることもなかったし、亜樹さんに何かを伝言していくことも特になかった。
あっちはあたしの気持ちに気づいてるはずなのに、何も無いってことは結局そういうことなんだけど、きちんと振られてもいないからあたしの心には翔生くんがずっと住み着いたまま。
あの時のつくねみたいに焦げ付いたままのこされていった。
「まーた、疲れた顔してんじゃん」
今日はなにをたべようかなーとメニュー表に目を向けていると頭上から懐かしい声が聞こえた気がして、バッと顔を上げるとカウンターの中にあの頃と変わらない笑顔の翔生くんがいる。
「……え?」
「おい、会って早々泣くなよ」
ははっと笑ってあたしの頭にポンっと手を乗せる。
「昨日、帰ってきたんだよ」
「帰ってきたの……」
「おう」
「もう行かないの」
「行かねぇ。あっちで色々身につけてきたからな。いつでもこの店継げる準備はできてるぜ」
「……ずっとここにいるんだ」
また、ここで翔生くんに会えると思ったら止まったはずの涙がボロボロと落ちてくる。
「おいおい、泣き顔ばっか見せてんじゃねぇよ。笑え」
苦笑いしてあたしの涙を拭う。
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