焦げついた思い

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「うわっ」 「なーにやってんの、お前」 「悪ぃ、ボーッとしてた」 行きつけの焼き鳥屋さんで、いつもの店員ふたりがやり取りをしている。 「翔生(とき)くん珍しいねえ、焦がすなんて」 「あーまぁ……うん」 カウンターに囲まれた中にある焼き場。 翔生くんの前には真っ黒に焼きあがったつくねだったものが2本ならんでいた。 翔生くんに声をかけたけどどうも歯切れが悪くて首を傾げる。 いつもの翔生くんならこんなことでめげないし、すぐに気持ちを切り替えられるはず。 「なんかあった?」 「何もねぇよ……焼き直すから待ってて」 ここにはもう4年も通ってて、マスターとその弟の翔生くんとはそのくらいのお付き合いになるわけだ。だから、いつもと翔生くんの違うなんてことすぐに分かる。 「彩愛(あやめ)ちゃん、ごめんねー。とびっきりの焼かせるからもう少し待っててねー」 「亜樹(あき)さん!いいの、いいの!あたしのことは気にしないで」 ここはこじんまりとした焼き鳥やさんで。 亜樹さんと翔生くんの2人でやっているお店。 4年前、仕事に疲れ果てて入ったここの温かさに惚れてもうずっと通っている。 翔生くんはあたしと同じ年の27歳で、亜樹さんは2つ上の29歳。元々このお店はお父さんのお店だったようで、お父さん亡き後を継いだんだって。
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