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「すまない!」
レバーを引いた。
暴走列車は進路を変えて、狭山の目の前を猛スピードで走り去っていった。
五人は助かった……が、この先には作業員の川村がいる。
狭山は、作業服のポケットから警告用の笛を取り出し、それを吹いて線路の先にいる川村に危険を知らせようとした。
ヒョロロロ……
うまく音が出ない。
頼りない笛の音は、慌てている狭山の心情そのものだった。
パニックのあまり、呼吸もまともにできなかったのだ。
それでも狭山は、なんとか笛を鳴らし続けた。
ピ、ピピピ、ピ~~~~~!
届け、この音。
頼む、逃げてくれ……
狭山は走って列車を追いかけた。が、線路を下っていく列車は、どんどん速度を上げていき、とても追いつけそうにもなかった。
狭山は声を張り上げる。
「列車が来るぞ~! 退避! 退避! 川村~! 逃げろ~!」
ここから叫んだところで、山奥にいる川村に聞こえるはずもない。
しかし、それでも狭山は叫んだ。
なんとか助かってほしい……
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