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男友達に話したら
「それはマジか!?」
次に相談したのは、魔法大学で知り合った男友達だ。大学の人気のないフリースペースに呼び出した。
相談には乗ってくれるだろうけれど、黒い部屋への興味は無さそうかな……と不安だったが、彼が思ったより食い付いてきたので仰天した。
「俺も、その部屋に閉じ込められていた過去がある。信用し難い話だろうけど、聞いてほしい」
男友達は一世一代の大勝負に立ち向かうように、手で汗を拭った後、深呼吸を二度した。
「俺は、異世界から転生してきたんだ」
私は息を呑んだ。私の求めていた人が見つかった。高揚感が止まらない。
「通り魔事件の被害に遭って死んだ。……で、気が付いたらこの世界の“二十歳の魔法大学に通う学生”になっていた」
私は腕を後ろに回し、彼にバレないよう右手の甲に三角を描く。魔法発動のために会話で時間を稼いでみる。
「転生前の記憶も残っている?」
「一応は。一部の記憶は失っているみたいだが」
今度は、左手の甲に逆三角を描く。以前、先輩に教わったように。
「凄いね。異世界転生した人って、大抵は前世の記憶無いのに」
「そうなのか……何でお前も当事者みたいな言い方して」
私は隙を見計らい、彼の顔前で猫騙しを食らわせた。快い音が辺りに響く。
彼が驚愕し、怯んでいる間に先輩直伝の魔法を唱える。すると、私達の現在位置が――先程まで話題にしていた、あの黒い部屋に移った。
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