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そして翌日、授業前のホームルームのことである。
「転校生を紹介する」と担任の先生はいつも通り語り出す。
そこに現れたのは予想通りの――
季節外れの転校生、ということだけでも目立つと思うが木更津哲也は腹が立つことに(一応それなりには)顔立ちが整っている、らしい。女子生徒たちは騒ぎ出し、ちょっとしたお祭りとなった。
とりあえず、自己紹介をという担任の先生の言葉の直後に――。
「アメリカに留学していた木更津哲也だ。自己紹介? そうだな、オレは斉藤琴音の幼馴染で、しかも婚約者だ!」
――などと、供述しておりというナレーションが私の脳裏をよぎる。
情報量が多い事故照会……いや、自己紹介をされ、全力でハリセンを持ってひっぱたきたくなるような発言を彼は繰り出した。
「ちょっと哲也! それは自称でしょ!? それに、私は金成くんと付き合ってるんだから勝手なこといわないで!」と私は叫ぶように返し、教室内はさらに悲惨なものとなったが、知ったことか。
ちなみに金成くんは「なんだこれ、嘘でも引き受けなきゃ良かったか……」
なんて、虚ろな表情で呟いていた気がしたが、私は金成くんのそのあたりの言葉は一切全く全然聞こえないふりをした。
***
授業が再開され、そこで体育の授業となった。
つつがなく終わると思っていた授業だったが――……
リレーの練習で、ド派手に転んでしまったのだ。
「斉藤!」
「琴音……!」
「いたあ……」
見ると足がすりむいて血がでている。
じんじんと痛む傷に思わず顔をしかめる私。
すると、そこでかけよってきた金成くんは私を抱え込まんとしてきたので、全力で拒否した。
「……なんで抱えようとするのよ!?」
「一緒に保健室に……とりあえず歩けないなら抱えりゃいいんだろ」
いやいやいや、なにそれ。
やろうとしてるのお姫様抱っこ、ってやつだろう。
絶対にイヤよ、そんなの恥ずかしすぎる。
いくらニセ彼氏でも限度ってものがあるでしょうに。
「ダメよ。あなたがいなけきゃ私たちのチームが負けるわ、絶対に負けるの。私なんて放っておいていいから、全力で戦ってきて勝ってきてちょうだい」
悔しいかな、彼はスポーツは万能、というかバイトで鍛えて体力があるらしい。うん、金成くんらしいけど。
「……いやだ」
「かわいい彼女のお願いをきいてくれないの? 」
「……どこが可愛いんだ? ……勝敗なんてどうでもいいから、連れてくってば」
……こいつ、張っ倒してやろうかとツッコミたくなったが、そこは我慢し首を振る。
「この程度、たいして痛くないわ。別に一人で行けるもの。私の仇を取れっていってるのよ、ほらイケメンのニセ彼氏くん、私のために頑張って」
「お前なあ……」
木更津哲也はこちらをずっと見ていたが、こちらにきてしまうと陣地外にいったとみなされ負けなので、これずにいるようだ。私をじっと、じっと見ていたのがひどく気になるけれども。
そうして私は保健室いった。
事件が起こったのはその後だった。
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