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3 〜綴〜 身体に力が入らない。 歌詞を書いてると、死にたくなる事がある。 しなきゃならない事は山積みなのに、気づくと一日が終わっていたりして…。 ビクトリアミュージックの会議室でアルバムのコンセプト、予算的な話、おおよその発売日を話し合い、その日は解散かと思いきや、やっぱり俺だけが居残りを命じられた。 舟木がくれた缶コーヒーを掴んで軽く振る。 パシャパシャと微量なコーヒーの音を聞いて、机にそれを重苦しく置き直した。 井波が終わったら連絡しろと言い残して、メンバーと先に帰ってしまった。 広い会議室に俺だけがポツンと取り残されている。 静寂を破ったのはさっきも一緒に居たプロデューサーの田中さんだった。 「待たせたね、悪りぃ悪りぃ」 「ぁ…いや…」 田中さんは俺の隣にドシッと腰を下ろして苦笑いした。 「帰りたそうだなぁ」 「そんな事…」 「まぁまぁ…NOT-FOUNDぐらいメジャーが制作費やら宣伝費かけて売り出すぞ!みたいに力入ってんのは、もう最近じゃ珍しい事なんだぜ?」 田中さんの言葉はありがたかった。確かに、ビクトリアミュージックのNOT-FOUNDへの力の入れ方は頼もしいものがあったのは事実だ。 「…如月…最近顔色、悪くないか?…」 「大丈夫ですよ」 「…一度病院へ」 「大丈夫ですって!それより俺だけ残った理由って」 「井波だよ。」 「えっ」 一瞬身体が冷たくなる。何かバレたのか?とか、胸がザワザワと騒いだ。 「病院に行くように話をしてくれって。」 田中さんの言葉を聞いて、ダラリと力が抜けた。 「ハハ…だから、俺は大丈」 「おまえ、鬱だよ」 田中さんの言葉で、作り笑顔が凍りついた。 鬱だよ 突きつけられた言葉は、何度か自分でも検索をかけたモノだった。 「精神衰弱…周りの期待とか、イメージを背負い過ぎてる。最近特にそうだ。良い医者がいる。話だけでも聞いて楽になって来い。今ならまだ大丈夫だ。」 「………はい」 アルバム制作に入る前に、自分が何者なのか、何をすべきで、何をしたくないのか、明らかにする作業が必要だと田中さんは住所が書かれた紙切れを俺の胸に押し付けた。
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