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〜綴〜
ホテルに着いた俺と井波は隣り同士にとられた部屋へ入った。
ドアが閉まりかけた時、後ろから肘を引かれて振り返る。
「…なんで別々の部屋に行くんだよ」
普段そんな事を言うのは俺の方なので、一瞬驚いた。
「…つ、疲れてるかなって」
「…それだけかよ」
少し考えたら、消されてしまった可愛い猫のような井波の写真のことを思い出したけど、掻き消した。
「それだけだよ」
「そう…じゃ、おやすみ」
肘を摘んでいた手を離した井波は隣りに向けて歩き出す。今度は俺がその腕を掴んでいた。
「何だよ」
「…ぇ…っと…こっち…で…寝て」
ぎこちなくお願いすると、井波は垂れた瞳でジッと俺を見つめ、目の前をすり抜け俺の部屋へ入った。
ほっと胸を撫で下ろす。
井波に続いて部屋へ入ると、井波は既にシャワールームに姿を消していた。
ザーッと水音が耳に入る。
カーテンを閉めて、もう朝なのに、夜を作った。
きっと疲れているからすぐに眠ってしまうに違いない。そう思いながら、シャワーから戻る井波を待つようにタバコに火をつけた。
暫くしたら、ユラユラ立ち昇る紫煙の向こうに、井波が見えた。
「思ったより早かったね。これ吸ったら俺もっ…」
ベッドに腰掛けていた俺は井波に押し倒されていた。
スプリングが軽く軋んで、俺に跨った井波はいつもの仏頂面で見下ろしてくる。
「そんな格好で…挑発してるの?」
腰にバスタオルを巻いただけの井波は髪の先からポタポタと俺に向けて雫を垂らす。
腰に巻いたバスタオルは足を大きく開いたせいで白い太ももをチラつかせる。
その肌に下から這い上がるような指を這わせた。
ピクンと井波の体が揺れて、垂れた瞳が細められる。
「おまえは死んでも人の心を持っていくんだろうな」
井波が心底辛そうに呟くもんだから、いやらしく触れた指先が止まってしまった。
ゆっくり上半身を起こして、井波の頰を撫でる。
「大丈夫…井波はそれでも…絶望しないよ。」
「…何だよ、それ」
「井波は光だから…例え俺が死んでも…きっと大丈夫」
頰にキスをする。
井波から顔を傾け、唇を塞いできた。
それは優しくて、愛しくて、離したくない温もり。
「死なないけどね、フフ」
俺が笑うと額をゴチンとぶつけて来た井波に押し倒され、ベッドに逆戻りだ。
そのまま俺のベルトを緩めながら身体中に井波の唇が這う。
「こんな大酒飲みが死ぬかよ…バカ…」
「フフ、井波、可愛いね」
「うるさいっ…」
井波の細い腰を掴んで、クルンと上下を入れ替える。
華奢な身体をベッドに貼り付けて、小さな尖りに舌を押し付けた。
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