139人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「うーん、こんな感じでいいかな?」
杏子が紹介してくれた男の人と会う日が明日に迫った夜、私は鏡の前で明日着ていく服を合わせながら独り言を呟いていた。
気乗りしないとは言え杏子の紹介だし何か失礼があってはいけないと思い、格好も手抜きという訳にもいかず普段あまり着ないようなワンピースを引っ張り出していた。
私はあまりお洒落に興味もなく、普段は動きやすさ重視でどちらかと言えば、スカートよりズボンを履くことが多い。
「……まぁ、ワンピース着ていけば、それなりに見えるよね」
私は気に入っている小花柄のワンピースに白のカーディガンという服装に決め、それをハンガーに掛けて出しておく。
「……結構散らかしちゃったな、片付けなきゃ」
足元には服やバッグなど、押し入れから出した物が散乱していた。
落ちていた物を拾い上げ、ケースにしまおうとしていると、ドンドンッとドアをノックする音が聞こえてきた。
「由井、居るか?」
「小谷くん?」
ドアの向こうから聞こえて来た声が小谷くんだと分かった私は、すぐに玄関まで行ってドアを開けた。
「どうしたの?」
「いや、大した用じゃねぇんだけど、バイト先でこれ余ったから……」
そう言いながらコンビニの袋を差し出して来たので中を覗くと、プリンが二つ入っている。
「わぁ~プリンだ!」
「今日までだし、俺二個も食えねぇから一つやるよ」
「いいの? 嬉しい!」
お言葉に甘えて一つ貰おうと袋から出しかけ、どうせ一人寂しく食べるなら一緒に食べた方がいいと思った私は、
「もし良かったら一緒に食べない?」
断られるかなとは思ったけど一緒に食べないかと提案する。
「……まあ、いいけど」
あまり気乗りしてはいないようだったけれど、小谷くんは断る事はなく了承してくれた。
「あ、じゃあ中に入って。今、コーヒーでも――」
そう言いかけて気付く、部屋が散らかっていた事に。
「ごめんね、ちょっと散らかってるけど……」
「別に、気にしねぇよ。お邪魔します」
と言いながら上がった小谷くんだったけど、
「……すげぇ散乱してる……」
予想以上だったのか、散らかり具合に若干引き気味の表情を浮かべていた。
「あはは……ちょっと、コーディネート考えてたらいつの間にかこんなになっちゃってて」
言い訳をしながらお湯を沸かす為やかんに水を入れて火にかけると、気のない返事が返ってきたけど構わず話を続けていき、先程決まったコーディネートについて男の小谷くんに意見を聞いてみる事を思いついた。
最初のコメントを投稿しよう!