プロローグ

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プロローグ

「やっぱり、早まった……よね」  後悔は引越し当日、新居にてすぐに訪れた。 「場所は良いんだよ」  私が今日から住むアパートは、都会にあって、駅から徒歩十分程度、大型スーパーやコンビニも徒歩圏内という好立地にある。 「だから、古いのは仕方ない……」  本当なら築浅の物件が良かったのだけど、好立地にあると家賃が高い。  だから、多少の古さには目を瞑ろうと思った。 「でも……」  とにかく多少古くても立地条件が良い事、費用もなるべくかからず家賃が安いところを探していた私は、不動産屋でこのアパートを教えてもらったのだけど、 「やっぱりもっと、よく考えるべきだった……」  好立地、敷金礼金無しな上に、契約年数の縛りも無ければ退去の際の費用も無し、家賃は管理費込みで一万五千円という言葉を耳にした私は即内見してみた。  外観も中も古い造りだったけど住めなくはないと感じて、よく考えもしないで決めてしまったのだ。 「安さで選んだの、絶対失敗だった」  引越して来てすぐにこんな思いをするなんて、絶対馬鹿だと思う。辞められるなら今すぐ実家に帰りたいけど、それは無理だから仕方ない。 「覚悟決めるしかないのよ、うん……」  住めば都と言うし、慣れればきっと大丈夫。そう、言い聞かせてはみるものの、 (築四十年、六畳一間、簡易キッチン有り、風呂無しトイレ共同のアパートとか……やっぱり有り得ない……)  新生活は最早不安でしか無かった。 「っていうか、ここの住人本当に居るの!?」  不動産屋で聞いた限り住人は居るようなのだが、内見の時も荷物を運び入れている時も、誰一人として住人に会わなかった事も更に不安要素になっている。
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