プロローグ

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「生活リズムが、違うだけ?」  このアパートは全部で十部屋あって、101号室、103号室、105号室、それから201号室が埋まっていてそれ以外は空いているらしく、防犯の事を考えて私は二階の部屋を選んだ。  そして本来なら角部屋が良かったのだけど、アパートは共同の玄関から入って階段を上がるタイプのもので、廊下には窓もあるけど日当たりがあまり良くないせいか、昼間でも薄暗い。  もちろん電気は付いているものの、手前と真ん中と奥の三ヶ所に小さめの電球がついているだけで、万が一奥か真ん中の電球が切れてしまった時、夜に一人で奥まで歩くのは怖いから角部屋を諦め、隣とは一部屋空けた203号室に住む事にした。 「四人しか居ないし、日曜日だし、家に居ないのかも……?」  朝から引越し作業でアパートへ来ていたのだけど、昼が過ぎても夕方になっても住んでいる筈の四部屋から人が出てくる気配はない。  どんな人が住んでいるのか分からないまま時間だけが過ぎていき、日も落ちて辺りが暗くなって来た頃、ようやく誰かが階段を上がってくる音が聞こえてきた。 (階段上がって来てるって事は、201号室の人だよね?)  そっとドアを開けてこっそり廊下を覗くと、やはり201号室の住人のようで、鍵を開けて中へと入って行った。 (暗くて、どんな人だか分からなかったけど、男の人、だよね)  外はもう薄暗く、廊下の電気は玄関を出てすぐ横にあるスイッチか階段を登ってすぐの所にあるスイッチを押さないとつかない為住人の顔はよく見えなかったけれど、シルエット的に男の人だという事だけは分かった。 「まぁこんなアパートに女の人が好んで住む訳ないよね……頑張ってバイトしてお金貯めて、もう少し良い所に引っ越そう」  そう心に誓いながら、静まり返った部屋で一人、ひたすら荷解きを進めていった。
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