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「実は、友達に紹介したい人がいるって言われて明日その人と会うんだけど……私、男の人と出掛けたりなんてしないから、どういう格好が良いのかよく分からなくて……。このワンピースにしようと思うんだけど、小谷くん、どう思う?」  ハンガーに掛けてある服を指差して意見を聞いてみると、彼は視線をワンピースに向ける。 「……俺、そういうのよく分かんねーけど……別に、格好なんてどうでもいいんじゃね?」 「そ……そうかな?」  聞いておいてなんだけど、やっぱり聞く相手を間違えたと思った。  でも、他に聞く相手もいないので仕方ない。 「それじゃあ小谷くんは、こういう格好の女の子が良いとか、ないの?」  少し気になった私は流れで彼にそんな質問をしてみたけど、 「どーでもいい。ってか、興味ねぇし」 「そ、そっか」  やはり聞く相手が悪かった。  彼は面倒そうな表情を浮かべながら答えると、これ以上質問には答える気はないと言わんばかりにポケットからスマホを取り出し弄り始めたので、それを見た私は小さくため息を吐いてお湯が沸くの待っていた。 「はい、どうぞ」  お湯が沸き、砂糖とミルクはどうするか確認してコーヒーを淹れた私は小谷くんの前にカップを置く。 「どーも」  一言口にした彼はコンビニ袋からプリンとスプーンを取り出してテーブルの上に並べ、それを各々手に取って食べ始める。 「コンビニで働いてると、こうやって廃棄予定の物って結構貰えたりするの?」 「そうだな、俺の働いてるとこは割と多い。そもそもコンビニで働いているのは余り物を貰うのが目的だから」 「そうなんだ? 私は居酒屋と本屋だから、そういうのはないなぁ」 「居酒屋なら、飯くらい食えたりしねぇの?」 「あ、うん、まかない料理はね。だから、居酒屋でバイトの日の夕飯代は浮くかな」 「ならいいんじゃね?」 「うーん、まぁ、確かに」  家賃の安いアパートに住む私と彼は出来る限り節約したいと思っているからか、こういった情報交換に似た話は妙に盛り上がる。  プリンを食べ終え、暫く話をした私たちは、「そろそろ部屋戻るわ」という小谷くんの一言で話を終える事になった。  彼が部屋に戻り、室内は静けさが訪れる。  シンと静まり返った部屋の中で一人、服を片付けてカップを洗っていると何だか少し淋しい気持ちになる。 (さっきは楽しかったなぁ)  話がすごく盛り上がった訳ではなかったけれど、一人でいるより誰かと居ると楽しいもの。 (明日会う人とも、楽しく話せるといいけど……)  杏子の話では気さくな人だというけれど、会ってみないとどんな人だか分からず不安も大きい。  未だ気乗りしないまま、いつもより少し早めに就寝して明日の約束に備えるのだった。
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