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新しい世界
カメラテストの日が来た。
桜子が車で迎えに来てくれる。
何を着ようか悩んで、やっぱり大好きな白いワンピースにした。これが一番私らしいと思うから。
家族にはカメラテストの事は言ってない。
受かるかどうかも分からない事で余計な心配を掛けたくないから。
万が一、選ばれたらその時話せば良い。
私自身は選ばれる訳がないと思っているけれど……。
桜子が言ってくれた事だし、気分転換にもなるだろう。
それくらい軽い気持ちで受けるつもり。
モデルなんて私には出来ないと思っているから……。
約束の時間前には門の外に出て待っていた。
桜子は真っ赤なドイツ車で現れた。
「紗耶、乗って」
そう言われて助手席に乗る。
「わざわざありがとう」
「私は紗耶のマネージャーですからね」
「まだ何も決まってないのに……」
「ううん。私ね、自信があるのよ。紗耶はきっとこの世界でやって行けると思うの」
「どこから来るの、その自信は」
「勘かな?」
綺麗な横顔で微笑みながら言うけれど……。
桜子さん。貴方の方が断然モデル、女優向きの美しい顔立ちとスタイルをお持ちだと思いますが……。とは今更口には出さないけれど……。
「勘ね……」
きょうは貴方の言われる通りにカメラテストだけは受けますが……。
正直言って落ちる自信しか持ち合わせておりません……。
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