三つ編み

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首を絞めた。 まさか役に立つとは思わなかったこの三つ編み。 おさげ、ってからかわれてたこの髪型。 「ねぇ…どんな気持ち?」 私は掴んだ三つ編みを軽く離した。ドサッ、と重いものが床に転げ落ちる。 もう聞こえてないとかわかっている。でも聞きたい。 「権力が一番なかった私に殺されてどんな感情?」 ねぇ… 黒髪が、三つ編みが揺れた。 ねぇ私。 「自分に殺されちゃったね弱い私」 彼女は私の分身。というかわたしが彼女の分身というべきか。 いざというときのお嬢様の代わり。 殺されるための代わり。よくいう替玉。 …でも、誰も気づかないんでしょう?入れ替わってても。 私は座り込み、彼女の方をそっと支えた。 「キャーーーーーーっっ」 いままでにないほど精一杯に叫ぶ。 「どうされましたっ!」 「この人が…私の代わりにっ」 部屋にとびこんできたメイドさんは、死体には目もくれず私の肩をさすった。 「お怪我はありませんか!」 小さく頷く。 「よかった…」 私はメイドさんに耳打ちをする。 「あのね、この人のこと敬意を示して焼かないであげてほしいの」 どうせ、身元もない私だ。焼いたところで骨を取りに来る人など居るまい。 私はスコップを片手に、彼女を支えて庭へ出た。 死体をメイドさんに預け、穴をほっていく。 ザクッ。 その穴に彼女を放り込み、またきれいに埋め直した。 私の入れ替わりが完了した。 ふぅ、とため息を付くとメイドさんが汗を拭きに来る。 と、庭に植えていた桜が風に揺らめいた。 「あの人が来世は幸せでありますように」 メイドさんは桜に願った。 ここに、いたのかもな。私の死を嘆いてくれる人が。 ごめんね、と小さくつぶやいたのは無意識だった。 メイドさんはニッコリと笑うと私の髪をなでた。 「それではこれから、よろしくお願いしますね」 これからも、ではない。 メイドさんは私の三つ編みを手に巻き付ける。 「秘密は守りますよ、お嬢様」 皮肉なことに、桜はキレイに色づいていた。 完
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