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義臣視点4
やはり篝に惚れたな和成よ。店の中でもずっと一緒だし、仕事も楽しそうだしな。
和成のタイプが分からなかっので少しだけ不安だったが問題なかったようだ。篝は男の目から見てもいい男だ。私の見る目があったということか。和成は今まで恋人が居たことがないと言っていた。奥手で引っ込み思案だから難しかったのかもしれない。
権力を振りかざして篝を和成の恋人にするわけにはいかない。なんとかして和成のことを好きにさせたいが、親が子供の色恋沙汰に干渉するのは避けるべきだ。……最終的には和成が頑張らなければならない。
「……仕事は楽しいか?和成」
「話を逸らさないでよパパ。どうしてパートの人達を違う職場に追いやったの?」
「追いやったって……。おまえのためだ」
「え?僕?」
「おまえが誰にも頼らず仕事をさせるためだ。人が居たら直ぐに頼るだろ?箱入り息子で、なにも出来ないから」
「うっ……」
和成が言葉を詰まらせた。ある意味間違ってないぞ。引っ込み思案で甘えたな和成は、接客業で揉まれるのが合っているんだ。
「で?仕事は楽しいか?」
「うん、滅茶苦茶楽しい。最初お客さんに声掛けるのが恥ずかしかったけど、今は大きい声で挨拶出来るんだよ」
「そうか」
「僕が一生懸命頑張ってたら、店長も褒めてくれるし……」
顔を真っ赤にして俯いてしまった。まったく、我が子ながら愛いヤツめ。
「店長のことが好きなのか?」
「え?え?なんで?」
この慌てふためきよう……我が子ながら分かりやすい。
「……うん。好きになっちゃった」
「ほう、そうなのか」
「で、でも、尊敬してるから好きで……えっと」
「そうだ、卒業祝いと就職祝いを兼ねておまえにマンションを買ったんだ」
「え?本当?パパ……。僕一人暮らしなんか出来ないよ」
「大丈夫だ。カレー店から近いし通勤が楽になるぞ。藤原も頻繁に向かわせるからな」
「藤原さんが?じゃあ安心だね。分かった」
賃貸マンションを一棟買い占めてやった。そのことは、もうしばらく和成には黙っておこう。
私が出来るのはここまでだ。後は頑張れ和成。
……まあ、直ぐに藤原は必要なくなるだろう、そう信じたいもんだ。
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