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和成視点➀
そして休日に、僕はパパに買って貰ったマンションに引越してきた……
「……ええ?マンションって、本当にここで合ってる?藤原さん」
「はい。今日から此処が、坊ちゃまのお城で御座います」
僕はマンションの外観をもう一度じっくりと観た。一応外壁は綺麗だけど、何回か塗装が行わているのかな?クリーム色が微かに滲んで違和感半端ない。なんていうか……築20年以上は経ってそうでボロい。階数を下から数えてみると5階まであった。5階建て?中途半端だなあ。タワマンとは言わないけどさー。……って、僕が住むのにタワマンじゃないってどういうことだよ!
玄関も自動扉じゃなくて手動なの?オートロックはあるけど、あれ?顔認証やスマホをかざすタイプじゃないのか?
「このオートロック、顔認証やスマホをかざすタイプじゃないの?」
「オートロックは、鍵穴に鍵をさし込んで回すとオートロックが開きます。鍵はこちらをお使いください」
藤原さんが僕にシリンダーキーを渡した。これは、学校で見たことがある鍵?僕は言われるがまま鍵穴に鍵を差し込んで回した。するとカチャっと鍵が開いた音がした。
「オートロックの鍵が開きましたので、扉を開けてマンションの中にお入りください」
「……」
僕は玄関の扉を開けて中に入った。えっ?エントランスホールもない。コンシェルジュも居ない!管理人室ってなんだよ?
「ふ……藤原さん、管理人室って……なに?」
「管理人の部屋で御座います。このマンションでは日勤管理で、管理人が業務を行っております」
「日勤?え?なに?」
「毎日通勤して9時~17時迄の勤務のことです」
え~?交代制で24時間勤務じゃないの?
「…へ、部屋の鍵はカードキーがあるんだよね?」
「そんなものはありません。先程お渡しした鍵を鍵穴に差し込んで回すと、部屋のドアが開きます」
さっきの鍵?シリンダーキー?僕は今一度、鍵をじっくりと見た……
「ああ…やっぱりそうだったんだね。僕もそうだと思ってたんだ……だ大丈夫だよ。鍵の開け方はちゃんと解るから……」
「それは出過ぎたマネを……申し訳御座いません。お部屋は2階で御座います」
「……に、2階?最上階じゃないの?」
「残念ながら、2階で御座います」
「……!」
エントランスホールもない。警備員もコンシェルジュも居ない!通いの管理人ってなんだよ?
なんでパパはこんなマンションを僕に買ったんだよ。僕のこと嫌いなのかな。少しモヤモヤしながら鍵を回して部屋の中に入った。すると、家電やベッドやテーブルが完備されていた。カーテンは僕の好きな色のオレンジだ。ラグマットも同じ色。部屋全体で1LDK?くらい?実家の僕の部屋の方が大きいし高級ベッドだ。……この部屋のベッド小さい。でも全体的に意外と綺麗だ。キッチンも意外と広い。コンロが3つある。お料理できないけど最新の家電も揃ってる。
……うん。意外と悪くない。此処が今日から僕のお城?
「藤原さんが揃えてくれたの?」
「はい。ベッドやテーブルの設置が気に入らなければお申し付けください。直ぐに配置換えさせていただきます」
「ううん。完璧だよ。ありがとう、藤原さん」
「有難きお言葉。クローゼットにお洋服一式をご用意しております」
クローゼットの中には、僕が愛用している服が何着もハンガーに掛かっていた。藤原さんの気遣いが凄く嬉しい。
最初にマンションを見た時は絶望感しかなかったけど、僕、一人暮らし頑張れそうだ。何時までもパパや藤原さんに甘えてばかりじゃダメだ。社会人になったんだから、頑張らなくちゃいけないと強く思った。
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