ジャスティス・ピンク

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ジャスティス・ピンク

『出たな。ジャスティス・ピンク!』  どうやら今度、送られてきた怪人はカニをモチーフにしたカニ・ギルディアだ。  大きなハサミがトレードマークなのだろう。 「フフゥン、清く正しく美しく。この世の悪は許さない。正義の味方、ジャスティス・ピンク。ゴージャスに見参!」  私は、いつもながら華麗なポーズを取った。  ミニスカートが舞うと野次馬たちがドッとわいた。  もちろんショートパンツを下に履いているがミニスカートがヒラヒラすると思春期の男子学生らはテンションがアゲアゲらしい。 「ヒューヒュー」  一斉に、周りの男子学生たちから歓声が飛んだ。  それはそうだろう。  男子学生たちの手前、いつもより余計に胸を強調してみた。  圧倒的な巨乳だ。  思春期の男子学生たちには目の毒かもしれない。 「さァ、カニ怪人。ボコボコにされてアワを吹きたくなかったら、さっさと退散なさい。シッシッ!」  できれば無用な闘いは避けたい。  これからキャバクラへ出勤だというのに、間違っても怪我なんてしたくない。  自慢の顔にキズなどつけられては取り返しがつかない。 『黙れ。ジャスティスピンク。正義の味方の中で最も弱いクセに!』  カニ怪人が私の気にしていることを怒鳴った。 「ぬうゥ、ふざけるな。私はこれまで九十四体の悪の怪人を退治してきたんだ!」  もちろん大幅に話しを盛った。私が怪人を退治したのは、せいぜい1、2体だ。 『ウソをつけ。ピンク。ジャスティスブルーやレッドは厄介だが、ピンクなら楽勝だ。さァ、このハサミでコスチュームをズタズタに斬り裂いてくれようかァ!』  カニ怪人は大きなハサミでアピールした。 「ぬうゥ、口ほどにもない怪人が。このジャスティスピンクに歯向かうなど、百億年早いわ。さァシッポを巻いて、とっととお帰り!」   『いやいや、まだ闘ってないだろう。なにを勝手に閉めようとしてるんだ!』 「わかったわ。私も無益な争いはしたくない!」 『な、なにィ?』 「運の良い怪人ねえェ。今日のところはダーリンと同伴があるから、引き上げてあげてよ」 『えェ?』 「助かったわね。次に会うときはカニかまぼこにして出荷して差し上げるわ!」 『いやいや、何をしに出てきたんだ。ピンク?』 「じゃァ、そういうことで」  私は一目散に退散した。   『どういうことだ。逃げるな。ピンク!』  カニ怪人は怒って追いかけようとした。  だが、私は逃げ足だけは誰にも負けない。
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