神の手を持つ外科医

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神の手を持つ外科医

「ああァ、あまり考えたくないだろうが、ピーチ姫には両親も兄弟もおらんのじゃろう?」 「ええェ、まァそうだけど」  静かにうなずいた。  確かに私は天涯孤独の身だ。  両親に許しを乞う必要もない。  降って湧いたような幸運かもしれない。  真神家の養女になるのも構わないだろう。   「早く決めてくれ。悠長なことは言ってられんのじゃァ。ワシの余命もあと僅かなんでなァ」  真神は初めて会った時から余命数カ月と告知されていた。 「ダメよ。ダーリン。諦めちゃ!」 「ぬうゥ、ありがたいが、こればかりはどうにもならんのじゃァ。天命なのじゃァ!」  すでに手の施しようがないらしい。 「あ、そうだ。前から考えていたんだけど、私が世界一のお医者さんを紹介してあげる」 「フフゥン、世界一ねえェ」  しかし真神は肩をすくめてあざ笑ってみせた。 「そうよ。あの先生ならどんな難病でも治してくれるわァ」 「そんなのはムダじゃァ、日本中の名医に診て貰ったがサジを投げられたんじゃァ」  真神は諦めたように苦笑いを浮かべた。 「いいえ、この世にタダひとり『神の手を持つ外科医』がいるわ」  私の知る限り、彼以上の外科医は存在しないだろう。 「ぬうゥ『神の手を』?」  真神も信じられないようだ。 「ええェ、天才外科医、マックロード先生よ。金の亡者の悪徳外科医だけどねえェ」 「ふぅん、悪徳外科医のマックロードかァ。確かにネットで見たり聞いたりしたことはあるが、彼の存在は都市伝説じゃないのか」   「いいえ、マックロード先生は実在してます。彼は3日前に死んだ死体を生き返らせた奇跡の外科医です」 「おいおい、魔法使いじゃあるまいし。そんな死体を蘇生させる術なんて出来るはずがないだろう」 「まァこの話しは眉唾ものだけど。マックロード先生は私と同じ正義の味方で、ジャスティスメンバーなのよ」 「え、正義の味方?」
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