マックロード

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マックロード

「えェッ、伊達直人ってェ?」  すぐに私は聞き返した。 「フフ、虎の覆面レスラーの活躍を描いた昭和のヒット漫画、『タイガーマスク』の主人公の名前さァ。過酷なデスマッチをしてその報酬を恵まれない養護施設へ寄付するんだ。それを真似て時折り施設へ伊達直人の名前でランドセルや現金を寄付する人がいるんだ」 「ああァ、そうねえェ。おじいちゃまもお願いだから諦めないで、マックロード先生に診てもらって」  私は真神天司の手を両手で握った。 「ぬウゥ」 「お願い。死ぬなんて言わないで。私のために手術を受けて!」 「姫の?」 「そうよ。やっと私たち家族になれるんでしょ。おじいちゃまと私で!」  こうして、私の薦めもあって真神天司は、『神の手を持つ外科医』マックロードへ連絡をすることになった。  私が先生の連絡先へ電話をすると、呼び出し音が鳴り響いた。  諦めかけた時、不意に電話がつながった。 『もしもし』  スピーカーからイケボが聞こえた。  マックロードの声だ。 「もしもし、マックロード先生。私、ピーチよ。今、ヒマあるゥ?」 『悪いがヒマじゃなくってねえェ。これから地下アイドルの握手会があるんだ』 「ねえェ、悪いけど私のダーリンの手術をしてよ」 『えェ、ダーリン?』
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