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ゆっくりと視線を合わせながら洋さんが離れていった。触れるだけの優しい口づけ。
「…なっんで、避けねーの?」
「えっ?避けたほうが良かったんですか?」
「ちげーよ。ただの予防で言ってみただけだ」
長い髪を掻きむしるから、縛ってる髪ゴムが緩くなり乱れていく。
「洋さんて…バイじゃないの?」
「お前そんな風に俺の事見てたの?」
「最初は…そうじゃなかったんだけど、あまりに自由に見えて、性も自由なのかなって最近思い始めてました」
「ちげーよ……そこのハードルは結構高いだろ。高かったはずだろ。なんなんだよお前。そんなもん簡単に取っ払っちまったぞ?その誠実に真面目に生きてきましたみたいな顔崩させたくなんだよ。こっち見てる視線も妙に熱こもってて、たまに色っぽくて、その眼鏡外したくなんだよ」
一度に言われてもこちらはなんと返したら良いのか。自分の中でのキャパオーバーだ。妻との時もオーバーしてしまい無言になってしまった。そんな私の事を妻はひたすらに可愛いって笑ってたっけ。
「なぁ。その視線は俺の気の所為か?気の所為だったらこれで触れるのはやめる。じゃなかったら、もう少し先に進んでみたい欲求はある」
洋さんは口説き方すらカッコいいのかとクラッとした。こんなカッコいい人に私はなんと答えれば満点になるんだろう。
「お前はあれだ、難しく考えんな。俺のこと好きか嫌いかだけ言え。俺が責任取るから」
責任…洋さんを好きになってしまった責任?そんなの…自分のせいだよ。
「洋さん、最初に見た時に憧れました。自分と全く違う存在。会って話すたびに惹かれていきました。どうしようもなく好きで、男性を好きになったのは初めてで動揺しています」
「動揺しててその文章?俺の方が取り乱してる、乱されてんだろ……、なぁ、俺たちはいい年した大人だ。惹かれてる人間とキスしたら自然とこうなるんだよ」
洋さんに手を取られ、主張し始めている股間をパンツの上から触るよう促された。
「固く、なってるね」
「お前はどっち側で考えてた?」
「どっち側とは?」
「俺を抱く側か、抱かれる方かってこと」
そんなの、いつも受け身で生きてきた私には、洋さんを抱くなんて恐れ多いし上手く出来る気がしなかった。
「そんなの………抱かれる方に決まってるじゃないですか」
「言ったな。準備が必要なんだよな」
洋さんは徐ろに立ち上がると、戸棚から何か持ってきた。
「これ」
「これって…」
「浣腸だよ。抱かれる側の準備と負担が半端ねぇらしい。お前見てるうちに調べちまったよ」
「なんで持ってるの?」
「たまに便秘になっからだよ。ツアー回ってねー時は運動不足で便秘しがちなんだよ」
「急に現実に戻された気分ですね」
「笑うな。どうする?無理強いはしない。お前がこれを受け取るか受け取らないかで関係を変えるつもりはない」
私はほんの一瞬迷ったフリをしたが、心は決まっていた。新しいことに身を委ねてみよう。
洋さんの手からイチジク浣腸を受け取った。
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