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猫様02 孤独で無力な猫様
ザーザーと、バケツをひっくり返したような土砂降り。
目の前の雨溜まりが、さらに大きくなっていく。
あまりの雨粒の大きさに、目の前で落ちて跳ねる水しぶきが、
龍二の小さな身体に、容赦なく降りかかる。
「ミ゛ッ、ニーッ(くそっ、濡れる)」
水滴を、プルプルと身体を震わせて払う。
雨は、容赦なく龍二の行く手を阻むように降りしきる。
男梅雨の大雨。そして梅雨寒。
小さな身体の龍二には、少し…いや、堪えるような寒さだった。
「……ミャァ(……寒いな)」
相変わらず、雨は土砂降り。
周囲が暗くなるほどの大雨。
龍二は、孤独な今の自分の状況に絶望していた。
時折、目の前の道路を車が勢いよく走ってくる。
雨溜まりの水を豪快に跳ね上げて、走り去っていった。
「ニ゛ャーッ(ゆっくり走りやがれ!!)」
悪態をつく声は、何もかも仔猫の鳴き声に変換される。
さらに、降りしきる雨の轟音で、その声も掻き消える。
龍二は、今の状況に既にうんざりしていた。
(何なんだ?猫の恨みでも買ったか!??)
キリッと凛々しく前を向き、相変わらずの存在感。
だけど、今の自分はしがない仔猫だ。
(人間に恨まれる覚えはごまんとあるが、猫は覚えがないぞ!?)
苦悶する表情も、仔猫の愛らしさに掻き消える。
今の龍二は、ただただ無力だった。
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