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猫様03 やって来た救いの手
龍二は、兎にも角にも打開策を考える。
「ミャゥ…(さて、どうするかな…)」
だが、三毛の仔猫に成り下がった自分に、出来ることなどある訳がない。
とりあえず、降りしきる雨が止むのを待つ。
濡れない小さなスペースで、ちょこんと座り、ただ待った。
「…」
小さな身体だが、頭の中は『俺様』だから、威風堂々とした佇まい。
背筋をピンと伸ばし、エジプト座りの三毛の仔猫は、
どこまでも美しく、凛々しかった。
しばらく雨が上がるのを待っていると、
雨霞の中から、人影が見えた。
やがて視界に入ってきた人物は、
龍二が愛してやまない、
龍二の唯一、白戸千鶴その人だった。
龍二は、思わず千鶴に声を張り上げた。
「ミニャーッ(千鶴っ)」
その声に、千鶴が反応する。
キョロキョロとあたりを見回し、
やがて椅子の下の、小さな龍二に気が付いた。
「三毛ちゃん?こんなところで動けなくなったの?」
「ミャー、ミャゥーッ(千鶴、とりあえず連れて帰ってくれ)」
「ん?お家はないの?ついてくる?」
「ミャーッ、ミャーーッッ(当然、連れていけ千鶴)」
必死に訴える龍二を、千鶴はそっと抱え上げる。
「あ、珍しい…男の子。君は希少種だねぇ」
「ミ?(ん?)」
「ふふ、何だか君が、龍二さんに見えるよ…」
「ミャー、ミャーァ(俺は龍二だ。さすが千鶴)」
千鶴の懐に抱えられ、龍二はとりあえず無事、屋敷に戻ることが出来た。
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