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猫様05 猫様のお食事事情
千鶴は、拓海の傷の処置をどうにか済ませ、食堂にやって来ると、
食堂の入り口で、龍二をそっと廊下におろした。
「ごめんね?あなたは入れないから、ここで待っててね」
「ニャアーッ(仕方ない。待つよ)」
龍二は、言われた通りに、廊下で待つ。
ちょこんと背筋を伸ばして、くるりと前足をシッポで包む、尻尾巻き座り。
千鶴は、そんな龍二の頭を優しく撫でて、
後藤のもとへパタパタと駆けていった。
静かな廊下に、千鶴と後藤の話し声と、
外からまだ降っている土砂降りの雨音。
少し湿っぽい空気が廊下を通っていく。
そんな場所でじっと待っていると、
龍二は、だんだん瞼が重くなってきた。
「…」
仔猫の睡眠時間は18時間程。
さらに外の寒さの中、孤独に苛まれて座っていた龍二は、
屋敷に戻ってきた安心感もあって、その場で丸くなって眠ってしまった。
□◆□◆□◆□
千鶴は、後藤のところに行くと、
猫用のご飯の材料を尋ねた。
「後藤さん、すみません。猫ちゃんを連れてきてしまって…」
「おやおや。状態はどうでしたか?」
「はい。野良ちゃんにしては綺麗な子で、あまり汚れていなかったので、とりあえずご飯をと…」
「では…」
後藤は、ささみと鮭、人参、かぼちゃ、ブロッコリーを取り出した。
ささみと鮭に小麦粉をまぶし、火をしっかり通す。
野菜も食べやすい大きさにカットして、オリーブオイルで炒め、
そこに豆乳を注いだ。
「ああ、豆乳…」
「牛乳は、猫にあまり良くありませんからね」
「後藤さんは、何でもご存じなんですね…」
「時々、保護猫活動に駆り出されてまして。多少の知識はあるんですよ」
野菜に火が通ったら、焼いたささみと鮭を投入し、
水分を少し飛ばして完成した。
しっかりと冷まして、水と一緒に受け取る千鶴。
「ありがとうございました、後藤さん」
「いいえ。何かございましたらいつでも」
千鶴は、にっこり笑って駆けていった。
ふふ、相変わらずお可愛らしい…。
いつもそう思う、炊事班番頭の後藤だった。
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