嫌がらせのはじまり

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 どちらにしろ花が少ないので、理由を告げる必要がある。 「実はここに来る前に、誰かが什器を倒して、⽤意していた花がほとんど使えなくなったんです。だから、今⽇は花が少なくてすみません。今⽇の分はサービスにしますから」 「そんな気は使わなくていい。それより、君はなにもされなかったか? ⼤丈夫だったのか?」 「ありがとうございます。私は現場を⾒てないんです。ちょっと家の中に⼊った隙にやられて……」  ⼼配してくれる颯⽃に状況を説明した。  ⾒ていないなら⾵のせいとでも⾔われるかもしれないと思いながら。  でも、颯⽃は真剣な顔で聞いてくれて、うなずいた。 「なるほどな。誰か犯⼈に⼼当たりはあるのか?」 「いいえ。こんなこと初めてでショックで……」  暗い顔をした⼀花に、颯⽃はいきなり頭を下げた。 「悪い。もしかしたら、俺のせいかもしれない」 「え?」  花をだめにした犯⼈と颯⽃がどうして繋がるのかわからず、⼀花は⾸を傾げる。  苦い顔をした颯⽃が事情を話してくれた。 「どうやら俺に近づく⼥性に嫌がらせするやつがいるみたいなんだ」 「近づく⼥性?」 「そうだ。俺の周りから適齢期の⼥性を排除したいみたいで」 「それって颯⽃さんのことが好きな⼥性が嫉妬して?」  彼ほどの男前で藤河ステートの御曹司というスペックなら、そんなこともあるかもしれないと一花は尋ねた。  颯⽃がモテそうなのは外⾒だけでなく内⾯からも理解できる。  ⾃分でもおどけて⾔っていたが、颯⽃は親切だし、気配りもできて、それをこのさわやかな顔でやられると好きになってしまう⼥性がいても不思議ではない。  ただ、それがほかの⼥性に危害を加えるまでとなると異常だが。  女性が放っておかないだろう端整な顔をしかめて、颯斗はうなずいた。 「たぶんな。君もそのターゲットになった可能性がある」 「でも、どうして私が?」 「うちに出⼊りしているのを見られたんじゃないか? それで跡をつけられたとか」  跡をつけるなんて陰湿な響きに、⼀花は⾝を震わせた。  そんな⼈に家がばれているなんて、恐怖でしかない。
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