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冬夜は年が明け、公立の高校を受験する予定だった。頭が決して良くはなかった冬夜だが、何とか地元の高校に進学出来る位には目処が立っていたのだが、両親が亡くなった以上それは無理となった。
自分が働いて生活費を稼がないと妹弟達は施設へと入り家族バラバラとなってしまう。
頼る親戚もおらず冬夜は高校受験を諦め、バイトを何個も掛け持ちしながら必死で妹弟達の面倒を見て来た。
だが、運命は残酷だった。
その日は妹に一番下の弟の世話を頼み、次男を連れて雨の日だったが少し遅い時間に特売狙いにスーパーへと向かっている時だった。
曲がり角を曲がろうとした時に弟の傘が道路を走って来た車に当たってしまったのだ。
車を止めて降りて来たのはいかにもガラの悪そうな連中二人で、どう見てもまともな輩では無いのが冬夜にも分かった。
冬夜は殴られるのも覚悟して謝ったのだが、男達は莫大な額の修理代を要求して来たのだ。
さすがにそれはおかしいと冬夜が言い返した事に逆上した男の一人が弟に向かって取り出したナイフを突き付ける脅して来たのだ。
刃先を頬に突き付けられ、泣きじゃくる弟の姿を見て我を忘れた冬夜は男に掴み掛かっていた。
男の持っていたナイフが突然の冬夜の行動に反応が遅れ、ナイフは弾き飛ばされたのだが、そのナイフの刃が運悪く男の腕を掠った。
男の一人が冬夜の胸ぐらを掴み、思い切り頬を殴りつけ、衝撃で冬夜は地面へと打ち付けられた。
痛みから自分の名を呼ぶ弟の声がどんどん遠ざかって行く。
意識を失ってしまったら駄目だと分かりながらも冬夜の意識はそこで途切れた。
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