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「?」
タクシーの運転手がそんな強張る様な場所に心当たりはない。余程入り組んだ場所で運転技術が必要なだろうか。
そう思ったが、この辺りはよくも悪くも「あまり特徴のない町」だ。
確かに多少細い道など入り組んだ場所はあるものの、それでも比較的「普通」だと思っている。
一応歴史的な建造物はあるけれど、世間一般に認知される程有名な場所もない。
それでいて大きなショッピングモールなどそういったモノ隣町にあって、みんな「友達と遊ぶ」となったら大体隣町に行く。
だから、言ってしまえばここは「遊ぶ人間にとっては通り過ぎる町」である。
「……どこを言ったんですか」
タクシーが目的地に向け走り出したのを確認し、私は気づかれない様にコソッと樹里亜さんに尋ねると……。
「あ。そういえば、バーのお金」
なぜか樹里亜さんは私の声が聞こえなかったのか、唐突にそう言ってお金を渡してきた。しかも、私が支払った額よりも多い。
「え?」
「ほら、バーで飲んだ時のお金。支払ってくれたのよね? 私が酔いつぶれていたから」
「え。あ、まぁ……そうですが」
「今の内に渡しておこうと思って」
突然何を言い出すのかと思ったら……どうやら樹里亜さんの頭の中は「私の質問」よりも「バーの支払い」の方が大事な様だ。
いや、確かに金銭に関する事は早めに解決した方が良い。大事なアルバイト代使って支払ったし。
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