第3章 訪問

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「これから何かと連絡する事もあるだろうし、もしかしたら迷惑をかける事もあるかも知れないから」 「いえ。それを言うなら私も……代わりにシフトに入ってもらう事があるかも知れませんから」  今のところアルバイトを風邪などの病気で欠席した事はない。  カフェでインフルエンザが流行した時ですら、私は何事もなく元気でむしろフォローするくらいだった。  それだけ「健康」とも言えるし、むしろ「長所」とも言えるすごい事だと思うのだけど……何だろう。  それだけ元気だと「自分はバカです」と宣言しているかの様に思えてしまうから不思議である。やっぱり「バカは風邪をひかない」なんて言われているからだろうか。  悪い事じゃ……ないはずなのに。  ただ、今のところは何ともなくても「万が一」という事は当然考えられる。それに、今日の働きぶりを見た限り、慣れてしまえば樹里亜さんも私と同じくらい動けると分かった。  もし、風邪や病気に限らずどうしてもアルバイトを代わってもらわないといけない時は頼らせてもらう事にしよう。 「それはお互い様ね。もちろん、アルバイトじゃなくてもいいわよ? 例えば……恋の相談とか」 「……まだ酔っていますか?」  なぜか穏やかに笑う樹里亜さんに対し、思わず怪訝な表情になってしまう。 「失礼ね。酔っていないわよ。本心よ。本心」 「……酔ってますね」 「酔ってないわよ」 「酔っ払いはみんなそう言うんです」  でも、正直意外だった。樹里亜さんがこんな冗談を言うなんて……。  私の知る樹里亜さんは誰かが冗談を言っても冗談と思わず変に真に受けてしまったり、下手をするとクスリとも笑わなかったりしていたというのに……。  それだけ樹里亜さんが変わったという事なのだろうか。  何か……私だけ過去に取り残されている不思議な感じだ。  でも、考えてみたらもうあの頃から十年以上経っている。そりゃあ樹里亜さんだって変わるだろうし、それはきっと月だって……。
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