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ただ……今のタイミングで言われてしまうとどうにも……何か誤魔化された様に思えてならない。
「い、いいですよ。次のアルバイトの時でも。それに、少し多いですし」
「良くないわよ。こういう事はうやむやにしちゃダメなの。お金が関わっているんだし。少し多いのは迷惑をかけちゃったお詫びよ」
そう言いながら樹里亜さんは私にお金を握らせる。
「いや、だからって何もタクシーの中でしなくても……」
樹里亜さんの言っている事は分かるし、一理あると思う。
ただ移動中のタクシーの中でお金を渡すのは……少しリスクが高いのではないだろうか。
もし、ちょっとした段差にタイヤが当たって車体がバウンドでもしたら……今回はないけど、仮にもし小銭を持っていたら……そう考えると「ここでお金を使う」というのはあまり得策とは思えない。
「いいからいいから」
なんて上目遣いで可愛らしく念を押されてしまうとこちらも強く出られない。さてどうしようか……と困っていたそんな時……。
「は、はぁ」
何とも煮え切らないけど、きっと樹里亜さんは何を聞いても教えてはくれないだろう。だとしたら素直にもらっておいた方が良さそうだと思い、お金を受け取ると……。
「っ!」
突然何かが光り、そしてすぐに大きな「ドンッ!!」という音と共に大量の雨が降り始めた――。
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