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「分……かりました」
結局のところ、私は「寂しがり屋」で一人はイヤだったので樹里亜さんの申し出に甘えさせてもらう事にした。
「あ、でも連絡は私からします。ちょうど今両親は旅行中なんですけどね」
「あら、そうなの」
そう言うと、樹里亜さんは「フフ」と穏やかに笑った。
「着きました」
「あ、すみません」
そんな私たちのやり取りが終わるまで待っていてくれていたタクシーの運転に、樹里亜さんは料金を支払った。
「さて、行きましょうか……」
「はい」
今も雨はすごい勢いで降っている。
ただ、ありがたい事にタクシーは樹里亜さんが指定した建物の入り口のすぐ近くで止めてくれた様だ。
でも、入口から玄関まではまだ少し距離がある。
「うわっ!」
傘も持っていなかった私たちはタクシーを降りてすぐに大量の雨に打たれ、樹里亜さんの「こっち!」という声だけを頼りに前へ進んだ。
それくらい、この雨の勢いは凄まじい。
もし仮に樹里亜さんが私を誘わずに帰り、私がこのままタクシーに乗っていたとしたら、きっと家に着くのはこれ以上に苦労していたはずだ。
なぜなら私の家の前の道は細く車一台通るのでやっとなくらいな場所にあるからである。
それこそトラックなんて来た日には人が一人通る隙間すらないくらい。
そんな道にタクシーが止まってくれるとは思えないし、その手前で降りたとしても今の様に前も良く分からない状態を歩くのは危険以外の何ものでもないだろう。
それに加えてこの夜道だ。
それを踏まえて考えても……樹里亜さんも大変なのにも関わらずこうして誘ってくれた事を心の中で本当に感謝した。
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