おやすみ前にホットミルクを(コメディ・SS・シロと隆と晴美ちゃんシリーズ②)

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「またミルクに膜が貼っちゃった。おばあちゃんならこんなことなかったのに。中学生にもなって僕ってだめだな」    おやすみ前のホットミルクを温め損なった隆くんが、ため息をついてスプーンで膜をすくう。 「これ嫌いなんだよな。でも捨てたら、死んだおばあちゃん、もったいないって怒るだろうな」 (しょうがないわね、私の出番だわ)  子猫のシロが、隆くんの持っていたスプーンをペロペロと舐め出した。 「シロ、食べてくれるの、ありがとう! シロはほんとに優しいな、おばあちゃんみたいだ。スプーンなめたのママには内緒だよ」  隆君は一生懸命に水道でスプーンを洗っている。  隆くんは知らない。猫のシロが、死んだおばあちゃんの生まれ変わりだってことを。 ◇  今日はガールフレンドの晴美ちゃんが来ている。  大学に入ってから、もう長い付き合いになるのに、キスもしてくれないから、晴美ちゃんちょっと焦れてる。  でも奥手の隆くんは気づいていない。  話し込んですっかり遅くなって、もう終電の時間。  晴美ちゃんは電子レンジに、隆くんのお休み前のホットミルクをセットする。 「ミルクは温めすぎないでね。膜が張るとまた爆発するわよ、必ず500Wで様子みてね」 「ハイハイ、気をつけます。もう遅いし駅まで送るよ」  2人は笑いながら玄関に向かう。 (わたしの出番ね)  電子レンジをスイッチオン。ただし500Wじゃなくて1000W。  バン! 「え、何?」 「何の音だ?」  慌てて戻ってくる2人、電子レンジの中でミルクが爆発したのだ。 「きゃーミルクが! なんで1000Wになってるの?」 「シロがスイッチに触ったのかな?」 「中がめちゃめちゃよ、早く掃除しないと、こびりついて大変だわ。私すぐ掃除する」 「掃除は僕がするよ、もう電車の時間が……」 「ここまでひどいと隆くんには無理よ。そのかわり今晩泊めてね、私タクシー代ないから」 「え?」 (後はよろしくやってください)  シロがくるりと顔を洗った。               
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