〜プロローグ〜

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〜プロローグ〜

あ、あと、1秒っ…! 「セ、セーフ…。」 玄関に着いたと同時に大きなため息を吐く。バイトの終わる時間がいつもより遅かったから、門限ギリギリにしか帰って来れなかった。靴を脱ぎ、階段に向かおうとすると、リビング側の扉から姉が出てくる。 「あら、帰ってきたの?」 こいつの上から見下ろして話す感じが1番嫌いだ。 「あと1秒遅れてくれば良かったのに…。」 残念そうに言いながら、悪魔みたいに笑ってくる。こいつを見てるとイライラするので、足早に階段を向かおうとすると、呼び止められた。 「長男は?」 さっきの悪魔顔とは裏腹に、真剣な表情をしてくる。 「…知らない。まだバイトしてんじゃないの?」 僕がそう答えると、姉は急に興味無さげになって、リビングに戻って行った。なんだ、あいつ。 僕が階段をゆっくり登っていると、リビングから楽しげな声が聞こえてくる。羨ましい訳では無い。僕が信頼してる家族はあいつらでは無いから。でも、あんな風に笑い会えたら…さぞ、楽しいだろうな…。そんなことを考えながら、僕らの部屋に着く。扉を開けると同時に埃の臭いがする。ここには、掃除機も無ければ、箒も無い。そして、ゴミ箱すらない。この部屋にあるのは、何年も洗えず、そのままの布団と、埃、そして、ろくに食い物も与えて貰えず空腹の僕らのみ。 「ベティお兄ちゃん…?」 僕に気づいたのか、妹がこちらを向く。 「ベティお兄ちゃんだ…!良かった、帰ってきてたんだ…。」 あまりにも泣きそうな顔で見てくるから、罪悪感で押し潰されそうになる。弟もこちらを向く。そして、弟は首を傾げて僕に問うてくる。 「…ラゼ兄さんは?」 「バイトだと思う。すぐ帰ってくるよ。」 安心して貰えるように弟の頭を優しく撫でる。が、安心するどころか、不安は増していくばかりなようだ。妹も弟の表情につられたのか、不安そうな顔をする。僕だって不安だ。なんたって、この家族は、イカれてるからな。
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