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ゆっくりと裏山までの道のりを歩いていると、道行く人に声を掛けられた。
「あんた達、裏山へ行くのかい?」
「はい。今から熊狩りに行くんです。」
僕はお得意の笑顔でお婆さんに返事をする。
「そうかい!じゃあ、あんた達は、かの有名なブレイク兄妹って訳か!」
ブレイク兄妹とはまさしく僕らのことである。外ではBreak派のBreakを取って、ブレイクと名乗っている。
イーブル家の人間、と言うと本当に嫌な顔をされるからである。イーブル家は、もはや宗教と言っても過言では無い。「世界は汚物で溢れていて、自分たちだけが正義である。」と考えている連中だからだ。
僕達は…それを壊すために、Break派を作ったんだ…。
「気をつけるんだよ〜!」
お婆さんに会釈してまた歩く。
暫くして、隣町まで歩いてくると、子供がしゃがんで泣いていた。
「どうしたの〜?」
兄が優しく声をかける。その子供はゆっくり口を開いて、こう言う。
「ぬいぐるみがお空に飛んで行っちゃったの…!」
見るに、風船に括り付けられて飛んでいってしまったらしい。
「あの風船は?」
「あれ、僕のじゃない…。」
弟が聞くと、男の子はそう返した。
彼のでは無いなら…撃っても問題ないな。
僕は兄と目線を合わせ、頷き合う。何をする気か?まぁ、見ときな。
パァンっ!
という音と共に風船が割れる。慌てて妹がぬいぐるみをキャッチしに走る。
「わぁ…!お兄ちゃんすごいね…!」
男の子は僕を見ながら目を光輝かせる。僕の能力、毒牙は、弓矢を出現させる。ちなみに、能力は秘密…。口外したらタダじゃ置かないよ…?
「えっと…僕がこんな事したっていうのは…秘密だ、よ?」
なんとなく兄の真似をしてみるがぎこちなさ過ぎて穴があったら入りたい。
「……うん!わかったよ、お兄ちゃん!ぬいぐるみ取ってくれてありがとう!」
こんなに純粋な顔をした男の子が信用できるかは分からないけど、まだ彼は世界を知らないから…。
「こらこら、もっと優しくやらないと〜?」
「優しく言ったつもりなんだが…。」
何がいけなかったんだろう。兄はこういうときだけちゃんとした事を言うからな。
「ぬいぐるみがに刺さってたら大変だったよ〜?」
そっちかよ。当たるわけが無い。僕は天才弓矢師だからな…。と言っても、この能力が発覚したのはつい最近。この仕事を始めたのもつい最近だ。
兄が発言した能力は消毒。盾になる能力である。
「俺が盾の能力じゃ無かったら、彼のぬいぐるみは射抜かれてたね☆」
また調子のいいことを言って…。
そんな会話をしながら進むと、任務のある裏山に着いていることに気づいた。
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