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引っ張られるようにして足を踏み出す。
二階の教室から一階の保健室へ行き、慣れた様子で扉を開けたユウヒ。
部屋の奥にある三つのベッドには誰もいない。
室内にいたのは窓際の机に向かっていた保険医の女だけだ。
「あら珍しい、朝から学校来てるなんて。しかもお連れ付き」
俺はオマケか。
俺達を振り返ってニコニコしている保険医に頬が若干引き攣る。
その俺の腕をクイクイ引っ張ってユウヒは堂々と中に入り、いかにもここの常連らしい動作で勝手に一番奥のベッドへ上がった。
「先生、ベッド貸して」
「借りてから言っても意味ないのよー。ちょっと、なに広げてるの」
飲食禁止の室内で委細構わずユウヒは箱を開けた。
保険医は保険医で窘める気すらサラサラないらしく、単なる興味で眺め落として箱の中身を確認している。
するとこの腹ペコ野郎。すかさず保険医を見上げて言った。
「ケーキ。アキラが作ったから全部僕の」
子供か。取らねえよ誰も。保険医笑ってんじゃねえか。
「ねえ遠山くん。あなたこの子と幼馴染やってて疲れない? ていうか作ったのコレ? 高幡くんのためならほんとになんでもやるのねえ」
「……ハハっ」
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