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田中に毎日頭を下げにいっているせいで俺達が幼馴染だという事実は学校中の職員が知っている。
ここでもまた感心したような憐れんだような目を向けられ、乾いた笑いを返す事しかできなかった。
そうしている間にもユウヒはさっそくケーキを頬張っている。つーか手掴みコラ。
「ユウヒ……。なんのためにフォーク入れといたか分かる?」
「うん。美味いよ」
「会話して、頼むから」
堂々とベッドの真ん中でケーキに貪り付く珍獣に深いため息をつき、俺もベッドの端に腰掛けた。
思えばこの十二年間、まともにユウヒと意思疎通ができた日なんてあっただろうか。
「遠山くん。心の悩みがあるならあたしが面倒見るから」
「面白がってる人に悩み相談はしません」
せめて笑ってんの隠してください。あんたまで俺に追い打ち掛けんのか。
色々とヘコたれている生徒を気にせず保険医は机に白衣を脱ぎ置き、俺達を残してドアへと歩いて行った。
振り返りざまににっこりと笑顔を向けて、無責任にも言い放つ。
「じゃああたし職員会議出ないといけないから。遠山くんは今日も田中先生の十カ条頑張ってね。ここでケーキ食べさせてたなんて言っちゃダメよ」
「生徒の身は守んないのに自分の身は守るんですか」
「大人って汚いのー」
ムカツクなこの女。ユウヒのサボり行為を日々黙認しているだけの事はある。
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