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目線を下げてドス黒い何かを背後に浮かべたユウヒ。
普通に怖いけど状況的に腹が立つ。どこまでワガママなんだこいつは。
俺から甘いものを恵んでもらえる事は期待できないと分かると、ユウヒはさっさと諦めて空になった箱を俺に押し付けた。捨てて来いって事だ。
自分は一人ベッドの上を膝で移動して、当然のように布団の中に潜り込んでいる。
頭にくるな。むしろ頭痛い。
「で、寝るのか。ああそうかい、いいよ分かったよ好きにしろよ。昼休み田中んとこ一緒に行くからそれまで寝とけ。十カ条言って許してもらえるなら安いもんだ、黙って突っ立ってるだけのお前の隣で延々十項目言い続けてやる。あーあよかったなーお前は俺みたいな優しい幼馴染持ってよ。なんでか知んねえけどお前のとこに行くはずのツケは昔から全部俺のとこに回ってくるもんな。ここまで尽くされてんだからたまには恩返しの一つでもしてみやがれコノヤロー。お前俺から普段どんだけの恩恵受けてると思ってんだよマイペースも程々にしとけ」
よく喋ると再び言われるのを承知で積もりに積もった鬱憤を吐き散らした。
小さい男だ。どうせ俺なんか。何を言ったってすべて聞き流されている事くらい分かってるよ。
言ってるうちに募ってくるのはどんよりした虚しさだけで、ユウヒから顔を背けてベッドから腰を上げた。
「俺は消えるからお前は大人しく寝てろ」
「一緒に寝ないの?」
「……はっ?」
「寝ようよ」
なんなんだ。普段喋らないのにどうして唐突な一言は投げかけてくるんだ。
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