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ベッドに背を向けようとした俺の腕を掴んで、そう言ったユウヒの言葉はなかなかのダメージをもたらしてきた。
ここで焦ったら俺の負けだけど、これは焦らずにいられない。
布団の中から顔だけ出して、一緒に寝ようなんて言われるこの辛さ。
ヤバい。可愛い。カワイイぞ珍獣。その目やめろ、人に変な妄想させんな。
心臓をバックバク鳴らせつつ、どうにかこうにか自分を落ち着ける。
手を放された所でベッド側に向き直り、ユウヒを見下ろせばぼんやりと捉えられた。
だけどこいつはとにかく意味不明。
解明困難な思考の持ち主は、再び俺の袖に手を伸ばしてやんわりと引っ張った。
「恩返し。すればいいんだろ?」
「……何が」
「アキラって僕とヤリたいんじゃないの?」
「…………」
ピキッて、言った。一瞬にして俺は凍りついた。その氷にはヒビが入った。
え。何。待ってよ、なんなのこの子。良い子はヤリたいなんて言葉使っちゃいけません。
じゃなくて、そうじゃなくて、いやそうなんだけど。
ユウヒは無表情でなに爆弾発言かましてるんだ。
一緒になってエロ本トークでさえした事がないのに、いろんなもん飛び越えてどこに到達しやがった。
「ちょ……っと、待て。なに言って…」
「自分で言ってたよ。ヤラせろユウヒのバカヤローって」
「ッ言わねえよ!」
言うかンなことッ。
本人を目の前にして明け透けな下心を叫んでいたら俺は病気だ。
言っていないと確実に誓えるけれど、ユウヒは俺の袖を掴んだまま首を横に振った。
「言ってた。テスト前に」
「テスト……」
というと、三週間前だ。
しょっちゅうサボっているくせに記憶力が人外のユウヒは、たとえ授業で抜けている所でも一夜漬けでカバーできる。
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