あいつとクッキーと俺

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 机に向かい、計算するは今月のバイト代。  しがない高校生にとってはハシタ金でも救いの神だ。  来週まで頑張れ俺。週明けになれば口座がちょっとだけ潤っている。  今週は何があってもこの財布の中身だけで生き抜かなければならない。  なんて事をやっていたら、背後からモンスターに襲撃された。 「ぐおっ!」 「つまんない。腹減った」 「お前はいちいち人の背中に突撃してくんな!!」  背乗り珍獣、ユウヒ。  ガバッと背中に圧し掛かり、腹を空かせて俺を食おうとしている。  訳ではなくて。食い物、特に甘い物の催促だ。  学校帰りにそのまま俺の部屋へと付いて来て、いつものように何をするでもなくここにタラタラ居座っていた。  別にいるのは構わないけど、ちょっとしたドッキリを含んだ邪魔をするのだけはやめてほしい。  だいたい俺がこうしてせかせかと時給計算をしなければならないのも元はと言えばユウヒのせいだ。  前々からユウヒが俺にタカってくるのは常だったけれど、最近はこれまで以上に際限がなくなってきている。  たぶん、きっかけはアレ。保健室での下心暴露。  あれ以来何かにつけてユウヒは俺を食い物にするようになり、そのせいで俺の財布は今日も不毛の地に成り果てている。  今だってこうして、お菓子寄越せと。  その上タチの悪いことに、ユウヒは俺の弱点を巧妙に突いてくる。手ごわい。  体の前に回された、男にしては細い腕。しっかりと抱きしめられる。  背後から俺の肩に顎を乗せ、ヒシッとくっ付かれていてはこっちだって邪険になんてできない。  こいつは何も考えていないような顔をしてどこまで性格が破綻していやがるんだ。
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