俺の幼馴染

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 俺には幼馴染がいる。同い年の男。  五歳の時に俺がここに引っ越してきて以来、なんだかんだで十二年の付き合いだ。  俺にはあいつが何を考えているのかが分からない。どれだけ同じ時間を一緒に過ごしていても、理解できる日は一向にやって来なかった。  あいつの生態を正確に知り尽くせる奴なんて、この世にはいないだろう。  器用な奴だから大抵の事はソツなくこなす。  なんか頭いい。なんか運動神経がいい。なんか良く絡まれるけど、いちミリも動じる事もなくなんか一人で処理してる。  だけどその反面では変にヌケている所もチラホラ。  なんとなくよく寝過ごす。なんとなくちょいちょいズボラ。空腹を感じると、なんとなく視線で俺に訴えかけてくる。  そんなヤツの一日の大半は、無表情かぼーっとしているか。  甘いものを与えれば無表情の中にもささやかな満足を見せる。庭に飛んできたハトとかスズメとかを見ているときは微妙に幸せそう。  そしてあいつが素の笑顔を唯一浮かべる瞬間は、完全試合のような喧嘩に秒で勝利した時だけ。  絡まれたのをいい事に盛大な返り討ちを浴びせ、ドヤ顔で口元に笑みを浮かべる時のあの姿と言ったらない。  笑顔なことはまあ笑顔だけど、暗黒の使者みたいな悪魔の微笑みだ。  はっきり言ってあいつは変だ。  一番近くにいる俺から見ても、あいつを完全に究明するには百年やそこらじゃとても足りない。  高幡夕緋。現代に生きる謎の生物。もっと言うとほぼ珍獣。  それが俺の幼馴染だ。
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