あいつとクッキーと俺

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 煩悩と理性との激闘の果てに煩悩の方を打ち負かし、ユウヒの腕から逃れて椅子を引いた。  平静を装いつつもトボトボ向かうは一階の台所。今から作り始めたら、焼き上がって丁度よく食えるのは夕食の後になるだろう。  この時間までここにいるという事は、きっとこいつもウチの晩飯に有り付く。  台所にいるおふくろもそれをしっかり分かっているから、今日はいつもより多めに用意しているはずだ。  そこに交ざってクッキーなんか焼くという事はどういうことか。  花嫁修業なんてしてないで成績上げなさいこのバカタレって、おふくろからチクチクガミガミ文句を付けられに行くという事だ。  気が重いけど行く。女王に頼まれたらノーとは言えない。  前屈みなのは気にするな。高二なんだよ、若いんだよ、そういう時期なんだよ。  こっち見てんじゃねえユウヒ。 「アキラは分かりやすいよね」 「…………」  こいつ、いつか絶対泣かす。
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