あいつとクッキーと俺

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*** 「……どしたよ?」 「おー……?」 「超眠そう」  だってほとんど寝てねえもん。  斉藤に問いかけられて額に手を当てた。さっきから眠くて眠くて仕方ない。  その元凶はやっぱりユウヒで、俺はあのモンスターに生命力を日々奪われている。  昨日の夜、夕食の後、ユウヒは自分の望み通り俺が焼いたクッキーと対面を果たした。  クッキー食う前に飯もちゃんと食えという俺の説教にはツンと澄ましていたが、ウチのおふくろが相手となるとユウヒはコロッと素直に傾く。  この野郎は誰が見ても可愛い部類だし、おふくろは昔からユウヒを溺愛している。  俺には厳しいのにユウヒには甘い。自分の手料理をなんでもかんでも食べさせたくて仕方なくて、ユウヒもユウヒでお食べと言われるまま出されたものはパクパク口へと運ぶ。  ユウヒの胃袋は見た目を裏切って底なし。勧められればいくらでも腹に収めていく。  だけど夕食中もずっと、ユウヒの意識はオーブンの中で焼かれているクッキーに向いていた。
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