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「アキラ」
「ん?」
「今日は僕こっちで寝る」
「はっ?」
「だめ?」
「いや、だめって……」
言葉も出ない。
幼馴染で家も隣だからお互いの部屋に泊まる事くらいは当然のようにしょっちゅうあったけど、ここ最近はなかった。だって。
本心をぶちかまして以来、一晩を一緒に過ごせなくなった。過ごさないで済むように避けてきた。
ユウヒも俺の下心が嫌でここに泊まらなくなったんだろうと。思っていたのに、どうしてこうなる。
緊張感の中でゴクリと喉が鳴った。冗談抜きで変態みてえだな俺。
「あの……ユウヒは……」
「なに?」
「いいのか。ここ泊まるの、嫌だったんじゃねえの?」
実は結構ショックを受けていた。
ベタベタくっ付いてくるのは単なる嫌がらせとタカリ行為の前兆だ。それくらいは分かっていたから、ここに泊まらなくなったという事はそっちの意味で嫌われたかな、と。
聞こうにも聞けずにいた事を思い切って聞いてみる。
すると当のユウヒからは、ケロッとした答えが返された。
「別に。アキラが僕のことすぐ帰らせようとするから泊まれなかっただけだよ。僕は嫌だなんて言った覚えない」
「え……」
「勝手に勘違いして一人で落ち込んでるアキラもバカみたいで可愛いと思うけど。ごめんね。面白いからずっと放っといた」
「…………」
いつものようにユウヒは無表情。だけどいつもとは違って良く喋る。
なんかバカとか言われたし。ついでに可愛いとか言われたし。
十二年一緒にいるけど、可愛いは初めて言われた。
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