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手首を掴まれたまま俺は硬直。心臓は尋常じゃないくらいにうるさく鳴り響いている。
振り払う事も出来なくてされるがままになっていると、パクパクと食べ進めていったユウヒの唇が俺の指先までたどり着いていた。
そしてなんの躊躇いもなく、ペロッと。舐められる。
「!?」
もうやだ。助けて。違う意味で泣きそう。
情けなくも腰を抜かしそうになりながら、腹を空かせた珍獣に詰め寄られる。
「ゆ、う……」
「物欲しそうな目」
「ぅえ?」
「してたらか」
何が。俺がか。
そんなバレバレな目だったのか。
「仕方ないからクッキーあげてみたけどやっぱ違うよね。アキラが見てたのはクッキーじゃなくて僕でしょ」
「……え、と……」
「誤魔化す必要ないから大丈夫。この前保健室で全部聞かされたし。多分あの時のこともアキラは誤解してるだろうから言っとくけど、この前も今も僕は嫌だなんて思ってないよ」
さっきから無表情でツラツラと。
だけどいくらか普段より楽しそうな雰囲気を纏っていると感じるのは、長年の付き合いがなせるわざだ。
ユウヒは今、楽しんでいる。
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