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でもどうして。こいつはそれでいいのか。
いくら幼馴染とは言え、いくら俺がお菓子献上マシーンとは言え、嫌だろ。普通。
「……なんで」
「それを僕に言わせるの?」
ちょっと強めに手首を引かれる。
無表情の中にあっても意外と意思の強い目に、スッと射抜かれて口を閉じた。
ユウヒは自ら身を乗り出して、俺のすぐ近くにもう片方の手を付いた。
すぐ目下、触れそうなくらいの距離には、何を考えているんだか一切読めないその顔が。
クッキー食ってたから当然だけど、微かに甘い香りが漂ってくる。
「ユウヒ……」
ドクンと、一際大きく胸が鳴った。ただしトキメキは一割。
俺はどちらかというと気圧されている。
ユウヒは可愛い。本当にとんでもなく可愛い。だけど中身は結構男らしい。
その部分をジワジワ見せて、真っ直ぐ見つめてくるユウヒの目。それは確実にこう訴えていた。
ウダウダやってんじゃねえよクソウゼエ。
「…………」
雰囲気的にはこんな感じ。
なんで分かるかっていうと、そこはやはり付き合いの長さがものを言う。
可愛いけど結構男らしいユウヒが本気でキレると無言で暴力に走る。
このままもたもたしていると俺もそのうちブチのめされる。
ユウヒに絡んでみて返り討ちに遭った町のヤンチャどもの数は少なくない。
その上そいつらの悲惨な終末を俺はいつもこの目で見てきた。だからこそ恐怖が勝った。
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