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こいつの強さは凶悪レベルだ。
あれはきっと園児時代、俺が近所のチビッ子道場に通い始めたのがいけなかった。
俺がどこに行っているか母親から聞きつけたらしいユウヒもその道場にすぐさま入った。それが全ての元凶だった。
小学校卒業と同時に道場は揃ってやめたけど、こいつはあのまま続けていた方が社会の平和のためだっただろう。
中二辺りからちょいちょい色んな奴らに絡まれるようになって、身を守る手段として昔習った事をケンカに持ち込んだのは取りあえずマズかった。
武道として体を張るなら際限とか抑制とかもあっただろう。
だけどケンカという縛りのない場で相手をぶちのめす快感を、どうやらこいつは覚えてしまった。
お菓子食ってるときと同じ。こいつは欲望に忠実だ。
「アキラ」
「はっ、い……」
余計な事を考えていたせいで、急に呼ばれて声が上擦る。
恐さ半分恥ずかしさ半分で思わず目を逸らす。
すると相変わらず俺の手首をがっちり握り締めたまま、ユウヒは更に迫ってきた。
立てていた膝は崩れていた。すぐにでも後ろに下がりたいが下がれない。
足の上にはユウヒの軽い体重がかかる。俺は動けず、ユウヒが接近してくるために、体は自ずと密接することになった。
なんだか気づけば抱っこ状態。ほぼそれに近い。
「ちょ……」
これは。冗談抜きにキツイ。恐怖心も一気に飛ぶ。
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