あいつとクッキーと俺

16/17

107人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
 無様に混乱状態へと陥っている俺を真っ直ぐ見上げ、逸らすことなくこの目を射抜いてくるユウヒには遠慮がない。 「アキラが作ってくれるお菓子は全部僕の物だよ。だからアキラも僕のモノでいなきゃダメ。お菓子も、それを作るアキラも、みんな僕の」 「何言って……」 「今ので分かって」  疑問の言葉は即刻はね付けられた。  接続詞はおそらく間違っているし、なんとか理解しようとすれば主物はお菓子で俺は従物になる。  ああほらな、やっぱりな。オマケだろ。俺はお菓子の。 「……ごめん、卑屈にしか物事考えられなくなってる」 「そうっぽいね。アキラは顔に出やすいから何考えてるか大体分かる」  お前が顔に出なさすぎるんだよ。そう言ってやろうとしたけどやめた。  床に付かれていたもう片方のユウヒの手が、俺の首に回されたからそれどころじゃなくなって。 「え……」 「こうすればアキラもさすがに分かるんじゃないかな」 「ぅ、おッ……」  直後、体に負荷が一気にかかってきた。ユウヒの腕が回されている首と、掴まれたままの手首。  ユウヒが後ろへ倒れるようにして突如俺を引っ張ったせいで、前方に向かってなだれ込むことになった。  ガタン、ばふっと。 「ッお、ま……!」  なぜか、ユウヒの上にいる。ユウヒの顔の両脇で、床に両手をついている。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加